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フィリップスバーグでフライを売るおじさん
ノーマンが何度も書いたロジャー峠の最低気温記録の看板
リンカンにあるノーマンの時代からあった古いホテル
ノーマンのキャビンがあったシリーレイクにも行きました
Blackfoot Riverの上流部
Blackfoot Riverの下流部
ミズーラのフライショップ King Fisher
緊張の一瞬
モンタナのネイティブ ウエストロープカットスロート

■ A River runs through it をめぐる旅 B
  Blackfoot River

 この夏はとても暑い夏でした。気温が華氏90度を越える日が5月から続き、雨が全然降らないのであちこちで山火事がおき、空は煙で覆われてまるで雲っているかのようです。

 先週は夫も土日休みがとれたのでフィリップスバーグという町にいる友達を訪ねがてらモンタナの西にあるRock Creekに釣りに行くことにしました。フィリップスバーグはビュートから少し南に下がった小さな町ですが、前に書いたルイスタウン同様、レンガ造りの美しい町並みが残っています。この町は銅山のビュートやその精錬の町アナコンダに水を供給するために作られたジョージタウンレイクへの途中にあり、また銀が採掘されたGranteという町にも近いので、1800年代後半から1900年初頭に栄えた町です。

 町に着き何度も友達に電話するのですがつながらず、町を歩いているとフライを巻いて売っているおじさんを発見しました。こういう風景もモンタナならではです。やっと友達が電話してきて、「今、サンフランシスコ。。。Rock Creek、水が少なくてだめだよ。Big Holeも同じだぜ」。早起きしてはるばるやってきた私はがっかりしてしまいました。せっかくここまでやってきたのだしと、地図とにらめっこしていると、北に上がれば「A River runs through it」の舞台Blackfoot Riverまで 100マイルほどしかないことに気づき、急きょ予定変更。A River runs through it をめぐる旅がはじまりました。

 といってもこんな事になるとは思わず、なにも事前になにも情報を得ておらず、こんなことならもう一度原作を読んでくるんだったと思いながら車を走らせ、夕方前にはモンタナハイウエイ(以下HW)200に着き、リンカンという町にむかって「Blackfootriver」沿いに車を走らせました。

「A River runs throughit」の原作を読むと主人公のノーマンがこのHW200をよく行き来していたことが分かります。父さんと弟のポールと最後に釣りをした場所ベルモント クリークはBlackfoot Riverの下流部 HW200から少し入ったところにありましたし、ミズーラのご両親をポールと訪ねるときに、お母さんの手料理を食べるためにHW200沿いにあるリンカンという町にあるおいしいレストランで食べるのをやめたとの記述があります。またアメリカの最低温度記録華氏マイナス69.7度(アラスカを除く)のあるロジャーパスのことをなんどもノーマンは書いているのですが、そのロジャーパスもこのHW200沿い。ポールがきっと飲んだ後に車を運転して車をぶつけた口実に、ジャックラビットを避けようと思って車をぶつけたというネバダクリークも近くにあります。いまのHW200はドライブにはとても快適な道ですが、「ノーマンが生きた時代は舗装はされていたのかしら」とか「ノーマンが大好きなジェシーにあうためにこの道でウルフクリークまで車をはしらせたのかしら」などと想像が膨らみます。

 さて肝心の釣りなのですが どこかいいフィッシングアクセスはないかと探しましたが、残念なことに上流部ハイウェイ沿いは私有地が多く、唯一 BLMLANDになっている部分か私有地との境目ぐらいしか一般の釣り人は川にアクセスできず、その部分は8月の土曜ということも会ってどこも釣り人がいました。仕方ないので今夜の宿を探しにリンカーンという町についたのですが、これまたどこもかしこも「NOVacancy」。せっかくノーマンのお薦めのレストランにいけなかったのが残念に思ったのとこの町をのがすと、また車で50マイル以上も走って大きな町のヘレナにいくかミズーラにいくしかないのです。

 地図をまた開くと近くに「SeeleyLake」が目にはいりました。「SeeleyLake」はこれまた原作を読むとよく出てくる地名で、この湖のほとりにローマン家族はキャビンを所有していて、ジェシーのお兄さんのニールと嫌な思いをしたノーマンはポールをこの湖のキャビンにいこうと誘っています。そのことを思い出して、宿があるかどうかわからないけれど行ってみたくなりました。でもここも満室だらけで、結局私たちはミズーラまでいく羽目になったのですが、ミズーラもノーマンが住んだ町。全くついていない私たちの旅でしたが、私は密かに心の中で「ARiver runs through it」を駆け足でめぐることができてむしろ嬉しくさえ思っていたのです。

 ミズーラについたときはもう日が沈み、暗闇が迫っていましたが、下流部のBlackfootRiverはまるで「A River runs through it 」の年老いたノーマンがBlackfootRiverを釣った最後のシーンのようでした。下流部のBlackfootRiverはパブリックアクセスは多いのですが上流部とは違い、川幅が広く渓谷が迫っていて、どこを釣っていいのか迷う感じがしました。Blackfoot Riverはローマンの記述によると最低気温記録があるロジャーパスあたりを源にミズーラのすぐ近くBonnerという製材の町でコロンビアリバーの支流であるクラーク フォークに流れ込む 上流部が25マイル、下流部が65マイル計80マイルほどの川なのですが、氷河でできた湖が決壊して氷河によって削りだされた川なので、特に下流部はV字峡のようになっています。ミズーラの町は農業学や建築の分野で有名なボーズマンのMontana state Universityに対し、リベラルアート分野で有名なUniverity OfMontanaがありますし、ワシントン州に近いこともあってか、ボーズマンとは少し雰囲気の違う町です。日本からの留学生も多いそうです。

 翌日モーテルの前に、「KingfisherFly shop」があったので情報を仕入れにいきましたが、「ベアースプレイ持ってきた?」といわれてあぜんとしてしまいました。大学のマスコットはグリズリーベア。ここも当然ベアカントリーなのですが、ボーズマンに住んでいると都会のいらないノイズが自然に対するセンスを邪魔してそういう基本的なことを忘れている自分に気がつきました。WYSにいるときは必ずもっていたのに。。。

 グリズリーベア覚悟でまたHW200を走っていると、ハイウエイ沿いに簡単に川にアクセスできる場所をみつけ、ここなら、グリズリーがでてきても逃げられると早速川に向かいました。雲ひとつない青空でたくさんの釣り人が釣った後ですので釣れるなど思ってもいませんでしたが、フライショップで薦められたフライを深みに投げると美しいいい型のウエストロープカットスロートが釣れてくれました。ウエストロープカットスロートはモンタナ州のネイティブフィッシュで、絶滅が危惧されている貴重な魚です。ずっと大昔から、そしてノーマンが釣った魚たちのDNAを受け継いだ子孫である魚が釣れたことをとても嬉しく思いました。

 その後も何匹も魚が釣れ、満足な旅になりました。ノーマンは小説の冒頭に「わたしたちの家族では、宗教とフライフィッシングのあいだにはっきりとした境界線はなかった。」といっていますが、カイラス山やエルサレムを目指す信仰心のように、私は「ARiver runs through it」というバイブルを片手にBlackfoot Riverのネイティブフィッシュを目指し、モンタナHW200を巡礼していたのかもしれません。Blackfoot Riverへのアクセスはミズーラの町が一番便利だと思いますが、HW200のOvandoという小さな集落にも「BlackfootRiver Angler」というフライショップやフライマン専用の宿がありました。今度はもう少しゆっくりこの周辺を探ってみたいと思っています。