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黄葉まっさかりのグレイシャー国立公園
キャンプサイトの申し込み書

熊からの害を防ぐための食料格納庫

我が家のキャンプパー

トラックに取り付け式のキャンパー
スネイクリバーカットスロート
スネイクリバーカットスロートは体側に赤い斑点が特徴
 
シンプルキャンプに乾杯は地ビールで
モンタナの必需品 ベアスプレー

■ イエローストーンカントリー流
  釣りキャンプ

 アメリカでは、暑かった夏も9月のレーバーデイの休日を境に終わりを告げます。今年の夏は非常に暑く、渇水状態も続いたので釣りはどこもかしこもあまり良い状態ではありませんでした。リビングストンで大ベテランのフィッシングガイドのピーターさんもお手上げ状態。夏に楽しいホッパーや早朝に起きるトライコのハッチにも出会うことがなく、くいの残る2015年の夏でした。

 そんな状態ですから、遠出していい状態の川に行く、気温水温の低い朝方を狙うために今年はキャンプをしながらの釣りが多くなりました。日本に居たときも一応一丁前のキャンプ道具は持っていましたし、バックパックを背負っての釣りキャンプも一応体験済み。キャンプというのはフライフィッシングを同じで、結構道具にこだわったりいろいろな楽しみ方があり、なんといっても自然の中で寝食するというリラックス感でフライフィッシングをなさる方はキャンプ大好きという方も多いと思います。

 モンタナはアウトドア天国といわれるくらい、フィッシング、ハンティング、カヤッキング、ハイキング、スキー、自転車などやろうと思えば何だってできる環境です。そしてそれらを楽しむ人たちは、ゴージャスなホテルなど目もくれず、国が管理する国有林やBML(Bureauof land management)の安いキャンプ場で寝泊りをするというのがモンタナ流。ギャラティン川、マジソン川沿いにはいくつもそういうキャンプ場がありますので、夏の週末になるとたくさんのキャンパーでにぎわいます。

 以前にいったビッグホール川のデッキーブリッジのそばのキャンプ場などは川が目の前にあって静かないいキャンプ場なのですが、なんと無料。他のキャンプ場も一泊一台の車につき$10から$20といった低料金に加えて、シニアパスといってアメリカ全土の国立のキャンプ場や国立公園で使えるパスを持っていれば半額です。

 ですから定年退職した方たちがキャンプ場に多く見られるのはそのためもあります。支払いは自己申告制。入り口にある封筒に必要事項を書き込みお金を入れてポストにいれるだけ。半券をキャンプサイトのクリップに止めて場所取りをするだけなのです。

 各キャンプサイトにはピクニックテーブルとファイヤープレス(火をおこす場所)が設置されていますし、ほとんどのキャンプ用にはトイレと飲料量の水が設置されています。国有林の管理者や夏の間はキャンプホストといわれる人たちがキャンプ場の管理をしてくださっているので、トイレもキャンプサイトもきれいです。もちろんKOA(Kamp(本来はCampなのですが) OF Americaの略で全米にあります)や民間のRVキャンプ場など個人経営のものもたくさんありますが、値段は最盛期になると一泊$50以上もします。

 先日も国有林管理のキャンプ場が見つからず、KOAのキャンプ場に一泊。共同ですがシャワー、トイレ、小さなお店、WIFI設備でインターネットも可能、プールにホットバスタブ、遊園地、アイスクリーム屋さんなどなどいたせりつくせりのキャンプ場でしたが、私たちにはちょっと贅沢すぎる感じ。日本によくあるオートキャンプ場といった感じがします。

 モンタナ州辺のキャンプが日本と大きく異なるのが「食事」と「寝床」。日本ではキャンプといえば、「キャンプめし」「BBQ」「ダッチオーブン料理」「野外炊飯」といった言葉が代表するようにキャンプ場でのご飯作りが大きなイベント。学校でも宿泊学習の大イベントのひとつで、生徒たちがメニュー作りから当日の分担まで結構な時間をかけて話し合い、当日は「めっこごはん」(しんののこったご飯)で残念がったりしながら楽しい体験をしていました。しかしながら、いつも思っていたのが残飯やごみのことです。キャンプのときはあれもこれもといってはりっきって調理をするのですが、実際そんなたくさん食べられるはずもの無く、残った焼きそばや焼肉の処理に困ったものでしたし、炊事場は生ごみや油で汚れ、ゴミ捨て場など目も当てられない光景だったキャンプ場もしばしばでした。

 ところがキャンプの盛んなモンタナに来てからは、キャンプ場でのそういった食べ物のトラブルはほとんど見かけなくなったのです。どこのキャンプ場に行っても食べ物が散らかっていたり、豪勢なキャンプご飯をして盛り上がっているグループはあまり見かけないのです。もちろんボーイスカウトなどのイベントではそういう風景はありますし、職場のスティーブさんはボーイスカウトをお世話していらっしゃるのでこれがダッチオーブンブレックファーストだといって鉄なべで作ったオムレツをご馳走してくださったことがありますけれど、ほとんどのキャンパーの食事はあっさりとしたものです。アメリカ人はあまり食にこだわらないといった気質もあるのかもしれませんが、最大の理由は「野生動物」特に「熊」なのです。

 私たちの住むイエローストーン国立公園周辺には500頭ほどのグリズリーベアがすんでいるといわれていますが、彼らの嗅覚は犬の7倍ほどといわれ、そうすると人間の7億倍のにおいをかぎつけることになります。キャンプサイトでの盛大なBBQのにおいだけではなく、食後の後の食器や調理器具を洗ったりした水でさえ、彼らはえさだとかぎつけてやってくる可能性があるのです。

 今年の8月もイエローストーン国立公園内で、公園の施設に働く人が子熊を連れたグリズリーベアに襲われなくなりましたが、人間を襲った熊は捕獲され殺すというのが国立公園のきまりだそうでこの母親熊も捕獲され殺されてしまったそうです。亡くなった男性にも哀悼の気持ちを感じずにはいられないのですが、トレイルから離れた人間を見て子熊を守ろうとした人を襲い、結果的には殺されてしまった母熊も哀れで仕方がありません。

 特に今年の夏は猛暑で熊の食べ物が枯れてしまったり山火事でふもとに下りてくる熊が多く、私も今年は交通量の多い道端で、たくさんの熊をみました。ウエストイエローストーンに住んでいたときには、近所の家に大きなグリズリーベアが入り込んで、食べ物を食べていたといったこともありましたし、ヘンリーズフォークで幹線道路から100mほどのところでフライショップのトラウトハンターのオーナーがグリズリーに襲われたなど、私たちは熊を含め野生動物がすむ場所にすんでいるのだと実感しています。

 人が住み着いた場所でさえそうなのですから、森や山の中のキャンプ場は熊のテリトリーといっても過言ではありませんので、そんな中でおいしいにおいが充満する焼肉やシチューを作るなどとんでもないわけです。バックパック用のフリーズドライの食べ物や缶詰などとても簡単な夕食です。汚れた食器を洗い、その水を流すなど地面にご法度なので紙タオルできれいにぬぐい、その紙は燃やすかにおいが残らないようにコンテナに入れて車の中に保管します。ドッグフードや犬の水も外に放置できません。テントで寝るときは食事のときにきていた服を着替えて寝なければなりません。数十年前に服についた食べ物のにおいを熊がかぎつけ、襲われたキャンパーがいるそうです。熊にかぎらず、マウンテンライオン、狼など人間を襲う動物がたくさんいますから、キャンプ場にはにおいを遮断して食べ物をしまう頑丈な箱、ゴミ箱も熊が開けられないような工夫がされたものが用意されています。

  といった怖い話をたくさん聞くのでモンタナではテントでのキャンプは一切せず、我が家の「寝床」はアメリカでは有名なティアドロップ型のキャンプトレイラー。室内はテーブルをたためばベッドと小さなストーブと水場がある簡単なキャンプトレイラーですが、キャンプ道具は全部をいれてあるので、気が向けばいつでも釣り道具を詰め込んでキャンプにでかけます。

 フォルクスワーゲンのキャンプ用バンも探したのですが、年代ものが多く山坂、ダート道の多いこの周辺ではちょっとかわいそうであきらめました。大きなキャンプトレイラーでまるで動くおうちのようなものもよく見かけますが、私たちにはそういうものは不要。トラックの荷台に取り付けるキャンパーも気軽にキャンプが楽しめるので人気があります。

 先週訪れたモンタナ州の北にあるグレイシャー国立公園はバックパックを背追ってハイキングする人が多いせいかテント泊の人が多く見られましたが、その場合は絶対にテントの周りになにも置かない、食べ物などは車の中か先ほど書いた鉄の箱の中にいれておかねばなりません。ヘンリーズフォークにいらっしゃる日本人の方がよくテントでキャンプをしておられましたが、私たちは車のとおりのある場所や民家の周辺でもグリズリーベアを見ましたので、テント泊はとても危険を伴う行為だと現地の私たちは思ってます。

 モンタナでキャンプをする人の多くがキャンプトレイラーやキャンパーといったハードな「寝床」を使うのはただ快適さを求めるだけではなく、安全性といった大きな理由があるのです。道の狭い日本ではこういったキャンプトレイラーは難しいかもしれませんが、昔あった(今もあるのでしょうか?)屋根があがって寝ることができた車がありましたが、そんな感じの気軽にキャンプができるキャンプ用の車がもっと出回るともっとアウトドアの楽しみが増えるようなきがしますが。。。

 日本でも熊が出没し、毎年被害もでているとききますが、特に本州が禁漁になった10月以降ヒグマが多く生息する北海道への釣行をなさる方もおおいと思います。武器扱いになりますので飛行機にはもちこめませんが、こちらではベアスプレーで命が助かった人はたくさんいますので必需品かと思いますし、楽しいキャンプでの食事が実は熊や野生動物を寄せているのかもしれませんのでその影響がないように最大限の努力をすべきかと思います。

  キャンプ場もキャンプのスタイルも食べ物もシンプル。リバーフロントにキャンプサイトをとって、夕飯前朝ごはん前にロッドを振って釣りができるというのはとてもリラックスできます。

 先日ワイオミングのジャクソンホールの喧騒を離れて、少し離れたスネイクリバーの支流でキャンプをしながら釣りをたのしみました。キャンプサイトの目の前で、念願の「スネイクリバーカットスロート」がたくさんつれました。体中央に赤い斑点が見られるのがイエローストーンカットスロートとは違うところです。またネイティブの魚にあえてよかった。自然の偉大さに感謝する一瞬でした。

 動物園や水族館ではなく、大自然の中で懸命に生きている熊や魚の美しさと威厳。人間が熊のテリトリーに入って釣りやキャンプをさせてもらうという謙虚さと自然への畏敬の念。魚と自然を愛するフライフィッシャーならきっと理解してもらえると私は信じています。